会社のDC(確定拠出年金)・iDeCo、一括?分割?退職所得控除は使い切っている。どう受け取ればいい?

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退職前後でiDeCoや企業型DCがある人は、これらの資金をどう受け取るべきか、悩む人は多いと思います。とくに、金額が大きい人、退職金がある人は受け取り方で数十万、場合によっては数百万の違いが出ることもあります。考えずに受け取ってしまうと数十万損するかもしれません。そこで、このコラムでは、受け取り方を考える際に必須の税金と社会保険の仕組み、そして、どのように考えれば良いのか、具体例を交えながらお伝えします。

最初にすべき3つの情報整理

受け取り方を考える前に、絶対にクリアにした方が良い情報が3つあります。

1、退職所得控除を使い切るほど退職金や確定拠出年金があるか

2、これからどんな生活を送りたいか(いつまで働くか、働かないか)

3、DCやiDeCo以外の資産(預貯金、退職金、NISAなど)がどれだけあるか

これらを整理しないと受け取り方の答えが出ないと言っても過言ではありません。私は、受け取り方について相談を受けた時は、必ずこの3つはクリアにしています。1番の退職所得控除については、後述しますが、2と3は必ずご自身で確認しておいてください。

受け取り方は分割受け取りと一括受け取りがありますが、私の経験上、多くのケースで「一括受取」の方がメリットが大きいです。それは税金と社会保険の関係から言えることです。では、税金と社会保険の関係を確認しましょう。

一括か分割か?受け取り方と税金・社会保険の違い

税金の違い

受け取り方で最も悩むのは、一括受け取りか分割受け取りかではないでしょうか。違いを詳しく見ていきます。

一括受取(一時金)

一括で受け取ると「退職所得」扱いになります。退職所得扱いの場合は、退職所得控除という非常に強力な非課税枠があります。
退職所得控除の具体的な計算式はこちらです。

退職所得控除(非課税枠)の計算方法

勤続20年以下の場合・・・40万円×勤続年数
勤続20年超の場合・・・800万+(勤続年数―20)×70万円

勤続年数は1ヶ月の端数は切り上げます。勤続30年2ヶ月の場合は、勤続31年になり、退職所得控除は800万円+(31-20)×70万=1570万円となり、1570万円までであれば非課税で受け取ることができます。

さらに、この非課税枠を超えたとしても「半分(1/2)」にしてから課税されるため、税負担が極めて低く抑えられます。ただし、退職一時金と確定拠出年金の資産は合算して計算をします。

分割受け取り

分割で受け取ると「雑所得」扱いになります。この場合、「公的年金等控除」という65歳以上は年間110万円、65歳未満なら年間60万円まで税金はかからない控除を受けることができます。ただし、他の年金(老齢年金や企業年金)と合算されて計算されます。したがって、分割受け取りの場合は、確定拠出年金以外に国の年金や企業年金がいくらかも合わせて考える必要があります。

社会保険との関係

退職後の社会保険のメインは介護保険と健康保険になります。

一括受取・・・社会保険との関係なし

分割受取・・・受取額によって保険料と自己負担が変わる

分割受け取りの場合、受け取っている期間中、毎年の「収入」としてカウントされます。そのため、国民健康保険や介護保険料に影響します。また、毎月の保険料以外にも、医療費や介護保険を利用したときの自己負担割合にも影響があります。

医療費は70歳までなら病院での窓口負担は3割負担ですが、70代前半は基本2割になります。しかし、年収520万円(夫婦世帯の場合)以上になると3割負担にアップします。さらに、後期高齢者である75歳以上になると、医療費は基本的には1割負担だが、一定以上所得があると2割、3割とアップします。

さらに、さらに、高額療養費も所得によって自己負担上限が変わります。高額療養費をどれだけ利用するかはわかりませんが、高齢になってから大きな医療費負担は避けたいものです。また、医療費だけでなく、介護保険料の毎月の保険料と介護保険サービスを使った時の自己負担割合(基本1割)も収入が増えるとアップしますので、注意が必要です。

分割受け取りだと社会保険に大きく影響します。最初に一括受け取りの方がメリット大きい人が多いと伝えたのは、税金面が少なくなる傾向にある人が多いのと、とくに社会保険への影響がないからです。

具体例で確認

では、ここで具体例を見ていきましょう。現在60歳男性で退職金で退職所得控除を使い切っている場合の例です。

退職金:2,000万円受け取り済み(退職所得控除使い切り)
60歳以降の年収:約480万円
企業型DC:加入歴18年、残高700万円
公的年金:年間約220万円(65歳から受け取るとする)
妻:パート勤務

このケースにおいては、DC受け取りの選択肢は、主に以下の4つのケースが考えられます。

  1. 60歳で一括で受け取る
  2. 60歳で分割で受け取る
  3. iDeCoに移換して65歳で一括で受け取る
  4. iDeCoに移換して65歳から分割で受け取る

そのほかにも、いろいろなケースが考えられますが、上記4つのケースで考えるなら、税金と社会保険は以下のような結果になります。

 ①60歳
一括受取
②60歳
5年分割受取
③65歳
一括受取
④65歳
5年分割受取
所得税38万円40万円/5年26万円35万円/5年
住民税35万円40万円/5年34万円75万円/5年
社会保険料115万円/5年

これらの計算過程は非常に複雑なので、説明は省略しますが、いずれのケースにおいても、確定拠出年金だけにかかる税金・社会保険料を計算しています。たとえば、①60歳一括受取りの場合は、退職金と確定拠出年金を同時に受け取るため、それら合計額に対して税金がかかります。しかし、上記の表では、退職金分の税金は除いています。したがって、現実は、もっと金額が大きくなります。

また、②60歳5年分割受取の場合は、給料にも税金はかかりますが、上記の表では給料分の税金は除いています。いずれのケースもDCにかかる税金と社会保険料だけを抽出して表記しています。なお、配偶者を扶養している前提で計算しています。

①は60歳で退職金2000万円とDC700万円を同時受け取った場合
②は60歳から働きながらDCを5年分割で受け取った場合
③はDCをiDeCoに移換して、65歳まで毎月2万円をiDeCoで積み立てながら運用を続けて65歳で一括受取した場合
④は65歳から国の年金を受け取りながら、それに上乗せする形でiDeCoを5年分割で受け取った場合

③と④はiDeCoで運用することになりますが、運用利回りは4%で計算しています。また、③はiDeCoで積み立てますから、受け取る金額は①60歳時点より増えているのですが、税金が減っています。これは、iDeCoの加入期間が60〜65歳まで5年間増える分、新たな退職所得控除を作ることができ所得税と住民税が①より減ったというわけです。

また、④のケースの注意点としては、5年間は国の年金とDCを同時に受け取るため、収入が増え、介護保険の自己負担が1割から2割へ上がる可能性あります。とはいえ、60代で介護保険を使う可能性は一般的に低いため、ここは考慮しなくても良いかもしれません。

どの結果が一番いい?

これを見ると③が良さそうに見えます。しかし、運用利回り4%で計算した結果がこれです。もし、運用がうまくいって、資産が増えると、当然税金は増えます。であれば、60歳でDCを受け取ってNISAで非課税運用した方が良いという選択肢も出てきます。

さらに、受け取ったお金をどうするかというのも重要ポイントです。生活費に使うのか、運用に回すのか、定期預金に回すのか・・・この選択方法によっても判断は変わってきます。また、②と④については、5年受け取りとしていますが10年で受け取ったら?あるいは、半分一括で受け取って、半分分割受け取りにしたら?というケースも考えられます。

さらに、④のケースは税金と社会保険の負担が大きいため、65〜69歳までは、まずiDeCoだけ受け取って、国の年金は70歳から繰り上げて受け取るようしたら?など、受け取り方について、考えればキリがありません。また、税制もコロコロ変わります。加えて、60代で途中から働くのをやめたり、給料が減ったりする可能性もあります。計算したとしても、前提が変わることは十分あり得るのです。なので、私自身は、あまりこの数字をあてにしすぎない方がよいと思っています。

最も大切なことは、これからどんな生活をするか、どんな生活をしたいか

このシミュレーションで分かるように、税金を計算したところで、前提が変われば金額も変わるため、ほとんど意味がないということです。
税金や社会保険を考える際は、ある程度、前提をおかないと計算できません。しかし、その前提はタラレバだらけです。タラレバは変わる可能性があります。だからこそ

ここを整理したうえで、どう受け取るのが自分にとって安心して、自分らしい生活を送ることができるのかを考えるのがとても大切です。簡単に言うなら、

ということです。今必要なのか、10年くらいはこのお金がなくてもいいのか。ということです。なぜなら、生活ありきだからです。税金が安くなるからと、受け取り時期を延ばして生活がキツくなったら意味がありません。冒頭にも伝えた

1、退職所得控除を使い切るほど退職金や確定拠出年金があるか→使い切らないなら、タラレバはほぼ関係ないので、非課税で一括で受け取ってしまう

2、これからどんな生活を送りたいか(いつまで働くか、働かないか)

3、DCやiDeCo以外の資産(預貯金、退職金、NISAなど)がどれだけあるか

これらを整理するのが大切です。

前田 菜緒
FPオフィスAndAsset代表。CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、公的保険アドバイザー、DCプランナー2級。大手保険代理店に7年間勤務後、FPとしてよりお客さまに近い立場でサポートをしたいという思いから独立。

保険などの商品を売らないファイナンシャルプランナーとしてライプラン相談を行っており、特に高齢出産夫婦が家を買って2人目を出産しても子どもが希望する進路をあきらめさせない家計を実現させることを得意としている。

お客さまが生涯にわたり経済的不安のない生活を送り、人生を自由に選択できるように。そして、なによりすべての子ども達が希望する進路をあきらめない生活を送れるようにとの想いを持ち活動中。

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