iDeCoがずっとマイナスです。選んだ投資信託が悪かったのでしょうか

iDeCoをはじめましたが、元本割れが続いています。選んだ投資信託が良くなかったのでしょうか。大きな利益にならなくても良いので、せめてマイナスをなくしたいです。

相談内容について

ご相談者:40代女性(会社員)

ご相談者は、老後の資産形成のため、iDeCoをはじめました。投資信託で資産運用をするのは初めてで、どの投資信託が良いのか、わからないまま選んで、積み立てをスタートさせました。

毎月、毎月、積み立てて、利益が出るのを心待ちにしながらスタートさせたiDeCo。

にもかかわらず、待てども待てども、利益が出ません。

いえ、利益どころか、初月からいきなりマイナススタートです。その後、マイナスが回復するのを待っているけれど、いつまでたってもマイナスから抜け出せない・・・

選んだ投資信託が悪かったのだろうか…
どうやったら利益が出るのか
いや、利益までは望まない、せめてマイナスを解消したい
いやいや、そもそも、iDeCoで老後資金の不足を解消できるのか

というお気持ちでご談に来られました。

相談のポイント

ご相談者のお話を聞くと、相談のポイントは以下の通りでした。

  • 運用をはじめて、まだ半年しか経っていないこと
  • iDeCoで利益が出る仕組みを理解できていないこと
  • 損益には手数料も含まれて表示されること
  • 老後は不安だが、不安の原因がわからないこと
投資初心者だと、自分が選んだ投資信託が悪かったんじゃないか?と、心配になりますよね。でも、投資信託選びより、資産運用の基礎知識を理解しておくことの方が、ずっと大切なんです。

資産運用の基本は長期・分散・積み立て

「長期・分散・積み立て」という言葉を聞いたことがある人は、最近多くなってきました。しかし、この3つの基本を、し〜〜〜〜っっかり身に染み込ませている人は多くないのではないでしょうか。

資産運用の基本は「長期・分散・積み立て」。この3つはセットで、どれか1つでも欠けるとアウトです。

ご相談者の場合、「長期」が欠けていました。

そもそも、iDeCoは老後のための資産形成制度。長期間で資産を作っていく制度です。40代のご相談者は、老後まであと20年あります。焦らずじっくり資産を作っていく心構えが大切です。

でも、資産運用始めたばかりだと、焦ってしまうんですよね。それは、「なぜ『長期』でないといけないのか?」に対する理解不足からなんです。なので、長期でないといけない理由をお伝えしました。

長期でないといけない理由

iDeCoには、「長期」で「積み立て」をするという仕組みがすでに備わっています。毎月毎月、投資信託を購入しながら積み立てるわけですが、投資信託は日々価格が変化します。極端ですが、1万円のときもあれば、1000円の時もあるということです。

同じ商品だから、できれば、安い時に買いたいですよね。だって、毎月1万円積み立てるとすると、価格が1000円なら、10個も買えます。しかも、翌月にその投資信託が1万円に値上がりしたら?

1000円で買ったものが1万円になったら、資産が10倍になるということですよね。しかも、10個も買ったんですから、それはそれは、大きな利益になります。

一方、最初に1万円で購入した投資信託が、翌月1000円なってしまったらなら、どうでしょう?資産が10分の1になってしまうということです。これは、ツライですね。

でもね、よく考えてください。

1000円に値下がりすると、自分の資産も減ってしまいますが、今月積み立てできる投資信託が10個もあるということなんです。これは、視点を変えるとチャンスなんです。

だって、買った投資信託が翌月に元の値段である1万円に戻ったら、大きな利益になりますよね。

長期で運用していると、このような積み立てが毎月起きるわけです(ここまで極端ではありませんが)

そして、最終的に投資信託が買った価格より値上がりしていれば、利益が出る仕組みです。でも、いつ価格が下がるか、上がるか分からないから、地道に積み立てをするわけです。

だから、利益が出るには、本当に時間がかかるのです。

ご相談者は、運用をはじめてまだ半年。iDeCoは、10年、20年といった長期運用レベル。利益が出るのは、まだまだ先と思って、じっくり待ちましょう。

損益には手数料も含まれている

金融機関によって自分の資産の表示のされ方はさまざまですが、一般的に、資産全体の損益については、手数料が加味されて計算されます。iDeCoは、最初に手数料が約3000円かかります。その後のランニングコストは金融機関によって異なります。

つまり、毎月1万円積み立てると、初月の資産残高はマイナス3000円スタートの7000円くらいになっているということですね。

下記は、SBI証券のiDeCo加入者サイトの「ページの見方」の一部です。

出典:SBIベネフィットシステムズ「このページの見方・ご利用方法」

①資産全体の損益は、資産残高-積立金累計(掛金+移換金)で求められ、積み立て金には、手数料も含まれます。一方、②個別運用商品ごとの損益は、購入金額と資産残高の損益で表示されて、手数料は含まれません。

ずっとマイナス評価だったのは、この手数料も大きく影響していたと思われます。

選んだ投資信託が悪かったのか?

ご相談者が一番気にしていた投資信託選びについてですが、決して選んだ投資信託が悪いというわけではありません。ネットで調べて評判が良さそうな投資信託を選んだとのことでしたが、選んでいたのは、バランス型の投資信託でした。この投資信託ひとつで分散投資が行われますし、長期運用に適した投資信託と言えるのではないでしょうか。

ただ、ご相談者とお話をしていると、ややリスクが高いものを好む一面もあると感じました。選んでいる投資信託は、リスクは高めではなかったので、資産運用の基本を理解した上で、リスクをもう少しとっても良いと考えるなら、他の投資信託と組み合わせる方法もあることをお伝えしました。

リスクを高めに設定すると、自分の資産が大きくプラスにもマイナスにも動くことになります。いわゆる、ハイリスクハイリターンですね。大きな損失を受ける可能性もあるけれど、一方で大きな利益を得られる可能性もあります。しかし、先ほどお伝えしたように、長期の積み立てによって、ある程度リスクは抑えられますし、ご相談者も、やはり、もう少し積極的に投資をしたい気持ちはあるようです。

そこで、各投資信託の特徴を一緒にネットで見ました。すると、ご相談者が、もうひとつ増やしたいと思えるような投資信託を見つけたので、それを積み立て商品として増やすことにしました。

iDeCoで老後資金不足を解消できるのか

ご相談者は、老後不安を感じていらっしゃったので、ねんきん定期便をご持参いただき、一緒に年金額を計算することにしました。年金額を計算して、老後はいくら不足するのか、その不足額をiDeCoで解消できるのか、まずは確認する必要があります。

ところが。。。

年金を計算して、ご相談者が最初に発した言葉は

「そんなに年金があるんですか?!」

でした。

年金額の捉え方は人によって異なります。同じ金額でも「思ったより多い」と考える人もいれば「全然生活できない」と考える人もいます。しかし、今回のご相談者は、想像していた以上に年金があり、老後不安はずいぶんやわらいだようです。

相談の結果

相談の結果、ご相談者は以下の結果を得ることが出来ました。

  • iDeCoのマイナス評価の原因は投資信託が原因ではないことがわかった
  • 損益には手数料が含まれていることがわかった
  • 長期間積み立てをする必要性を理解できた
  • 自分自身で納得できる投資信託を選ぶことができた
  • 評価がマイナスでも不安な気持ちはなくなった
  • 老後に対する不安が解消された
老後不安がずいぶん和らぎました。iDeCoのマイナス評価の原因もわかり、気持ちが前向きになりました。その日の夜は祝杯をあげました!

FPからのアドバイス

実は、ご相談の半年後「iDeCoがプラス評価になりました!」とご相談者から連絡をいただきました。資産運用をしたからといって、数ヶ月で資産が増えるわけではないということを、ご相談者自ら経験をされました。

そして、その3年後、また連絡をいただきました。「最近、『資産運用している人は順調な成績だ』というニュースをよく見るのですが、私のiDeCoはすごく調子が悪いです。マイナス20万円にもなっています。なぜ?」という連絡です。

世界的に経済が好調、もちろん選んだ投資信託も好調な成績なのに、ご相談者だけが絶不調?なぜ?と、思い、スクリーンショットを送付していただいたところ、なんてことはありません。プラス評価とマイナス評価を見間違えていただけでした。

ご相談者は、資産評価を見間違えたものの、自分の資産がプラスになった、マイナスになった!と一喜一憂するのではなく、経済状況をチェックしながら自分の資産を冷静に考えられるようになったのですね。

なんとなく老後が不安、iDeCoの運用が不安という方は、少なくありません。もし、自分のiDeCoや老後に疑問や迷いがあるなら、ぜひご相談に来てくださいね。iDeCoに関するご相談の詳細は、こちら

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